八ヶ岳 権現岳(ごんげんだけ)
2,704m


三ツ頭から見た権現岳

 八ヶ岳の権現岳(ごんげんだけ)です。

 こんなことを言うのもなんですが、山に関して言えば、私は実に慎重な人間だと思います。この“山”のコーナーをまともに見ている人は、きっと“うそつけ!!”とお怒りでしょうが、実際に私はとても慎重な人間です。攻略本(ガイドブック)やインターネットを有効に活用した情報収集や、無理のない山行計画など(ホントかよ!!)、実に用意周到に山へ向います。その証拠にというのもなんですが、今まで計画して、ピークを踏めなかった山はない!!
 まぁ、たいした山行をしていなかったのも事実ではありますが・・・それでも、天候など不確定要素の多い山において、このことは、自分でもそれなりにすごいことかな?と思っております。いやっ、ラッキーなだけだな・・・
 しかし!!今回は残念ながら失敗です。ピークを踏めませんでした。
 よく、“登山は頂上に立つことが重要ではなく、その過程が大事だ”みたいなことをいう人がいますが、私はそんなオカマ野郎とは、絶対に、一緒には山へ行きたくありません。山登りというからには、やっぱり、登る先にはピークがあるわけで、それを踏めないということは、やっぱり負け、もしくは失敗ということではないかと考えるわけで・・・
 
 とまぁ、長々とワケノワカラナイ前置きを書きましたが、とりあえず今回の記録は、権現岳の頂上直下、標高2600m付近までのものです。
 
 そのときの日程です。
 12月22日:深夜、天女山入り口に到着。車中泊。
 12月23日:天女山入り口⇔天女山⇔前三ツ頭⇔三ツ頭⇔頂上直下、標高2600m付近


 権現岳の登山口は3ヶ所ほどありますが、頂上への最短コースは天女山入り口からのものではないでしょうか。無雪期であれば、十分日帰りできる距離だと聞いています。しかし、今回は積雪期。日帰りでは、けっこう厳しいのではないかと思い、前夜に登山口まで来て車中泊をして、スタートダッシュを決めこみました。

 天女山入り口は、八ヶ岳横断道路沿いにあります。
 八ヶ岳の表玄関である“美濃戸”とは、主稜線を挟んで反対側にあるので、“どこにあるのそれ?”と思う人が多いのではないでしょうか?実際、美濃戸に比べて入山者はとても少なく“八ヶ岳=冬でも大賑わい”とイメージを持っていた私としては、ちょっと寂しい気がしちゃったりもするのですが・・・

 天女山入り口のゲート付近 

撮影=塩月
 雪のない時期であれば、標高約1500mの天女山山頂近くまで車でいけるのですが、この時期は八ヶ岳高原ラインから歩かなければいけません。
 休日とあって、私のほかにも車中泊している人が何人かいました。

 この日は、朝6時頃に起床し、6時半頃出発です。ほぼ同時刻ぐらいに、私のほかに単独行の登山者が2人、権現岳に向って出発しました。正直言って、かなり助かりました。なぜなら、この2日前に大雪が降り、ラッセルに苦しめられるのは必至!!だったからです。

 天女山までの登山道

撮影=塩月
 天女山までは、明るい林の中の登山道を歩いていきます。冬でもハイキング程度なら、余裕のコースです。

 30分も歩けば、天女山に到着です。
 ここからの景色もなかなかですが、もう少し歩けば天の河原という、もっと見晴らしの良いところに出ます。

 天の河原(1620m)

撮影=塩月
  地元のオバハンも、ゴム長靴で散歩に来ていました。なかなかいいとこですよ。
 天の河原から見える富士山と甲府盆地

撮影=塩月
 南アルプスもよく見渡せる

撮影=塩月

 本当に素晴らしい眺めです。少し散歩すれば、こんな景色の見える場所にすぐいけることができる地元の人が、うらやましいと思いました。

 天の河原からは、しばらく開けた場所が続きます。天気もいいし、かなり気持ちがいい。目的の権現岳や、赤岳・阿弥陀岳などの八ヶ岳が見えてきて、テンションも上がってこようモン!!

 目的の権現岳が見えてきた。

撮影=塩月
 左から権現岳・阿弥陀岳・赤岳

撮影=塩月 チョットアンダーな写りでショック・・・

 しかし、お気楽な登山はここまでで、ほどなく林の中の急登となり、膝上からモモあたりまでのラッセルに苦しめられます。深いところで、腰ぐらいまでの積雪がありました。

 こんな感じの登山道

撮影=塩月
 新雪で、雪が全然締まっていなかったので、ズボズボ足が埋まっていきます。先行者がいて、本当に助かった。

 先行者(途中までは私が先頭だったんだけど・・・)がいたとはいっても、それでもかなり厳しいものがありました。
 
 なんとか苦しい樹林帯の急登を抜けると、前三ツ頭(2364m)というちょっとしたピークへ出ます。
 ここは開けていて、とても気持ちがいい。中央アルプスや御嶽山までも見渡せました。

 前三ツ頭から三ツ頭へと続く稜線

撮影=塩月
前三ツ頭から見た中央アルプスと御岳山

撮影=塩月
 樹氷

 撮影=塩月
このへんは、吹きっさらしになっているせいか、樹氷がみごとに発達していました。





 前三ツ頭から、少し急登を越えると、ほどなく三ツ頭(2580m)へと到着します。
 はっきり言って、ここからの景色はすばらしい!!感動モンです。

 三ツ頭から見た、八ヶ岳連峰。左から権現岳、阿弥陀岳、そして主峰・赤岳です。

 撮影=塩月

 この景色を見れただけで、もう満足!!とっ、思ったりもするわけですが、いよいよもって、あの山のテッペンまで行かなくてはイカンとも感じるわけで。俄然、テンションは上がっていきました。

 しかし!!実際に、この時期に日帰りで行くのは、ここまでが限界ではないでしょうか?
 朝6時半ごろに出発して、この三ツ頭に到着したのが、12時ごろでした。約5時間半も歩いて来ているわけですから、帰りのことを考えるとタイムリミットです。私のほかにいた、2人の単独行者もここで引き返していました。だけど私は、何をとちくるっていたのか、タイムリミットを午後2時と決めて、さらなる高みへと目指していったのでした。

三ツ頭からは、少し標高を落としていきます。そして、また樹林帯を登り返すのですが、ここからが本当にキツイ!!腰ぐらいまでの積雪があり、苦しいラッセルが続きます。しかし、頂上まであと少し。突撃あるのみです。
 
 なんとか樹林帯を抜けると、雪もダイブ締まってきました。 そこで、“さぁ!いよいよ最後の山場!!”とばかりにアイゼンをつけ、歩き始めたときのことです。まず最初の一歩を踏み出した瞬間、

 ぐっ、ぐえ〜

 右足に激痛を感じ、倒れこんでしまいました。あまりの痛さに、悶絶!!涙が出てきました。
 
 でも、なんで?
 右足の膝に、強烈な痛みを感じます。考えられるのは、相当無理をしていて、もう膝が限界に来ていたということです。それはそうで、はっきり言って、かなりマズイ。いやっ、危機的状況というべきか。とりあえず、痛みが退くまでその場にじっとすることにしました。
 
 30分ほど、休んでいたでしょうか。だんだんと痛みも退き、なんとか立ち上がれるようになりました。冷静さも取り戻し、時計を見てみると、午後2時を回っています。
 タイムリミット。
 頂上はすぐそこに見えてるのに非常に残念ダス。
 
 下山を開始することにしました。

 最終到達地点からみた権現岳

撮影=塩月
権現岳頂上直下、標高2600m付近。夏であれば、あと10〜20分程で頂上に到着するのではないでしょうか。
本当にあと少しです。
残念です。


 下山は、もうホントに大変でした。なんとかダマシダマシ右足をかばいながら、歩きました。でも、よくよく考えれば、あそこで足が何ともなくて、そのまま頂上まで行っていたら、その日のうちに帰ってこれたかどうか疑問です。ていうか、無理だったな・・・そう考えれば、ある意味ラッキーだったのではないでしょうか。なんとか無事に、午後6時30分頃に登山口に到着しました。帰りの車は、右足を使わず、左足でアクセル・ブレーキを踏んでなんとか運転しました。
 
 こうして、この権現岳で“登山”初めての敗退を味わったわけですが、このことがきっかけで、少し山へのモチベーションが下がった気がしてなりません。はたして、非常に限られた時間に無理をしながら、かつて経験をしたことがあるような単調な山行を繰り返すことになんの意味があるのでしょうかねぇ?とか思ったりします。
 後日、大学のころの同級生から、かつてつきあっていた女性が、この権現岳敗退の日に結婚したと聞きました。退屈な街に住み、あいもかわらず同じような山行ばかり繰り返している私と、着実に新しい人生を歩んでいる彼女を比べて、人生の明暗が・・・とかそういうことを言うつもりはないのですが、せめて“山”に関してだけでも、次の段階に進んでもいいのではないかと思う今日この頃です。
 だけど、次の段階ってなんだ?

 そんなもんで。


 下山途中に見た富士山

 撮影=塩月