ジャウパヤー


 2003年5月1日

 みんな元気?私は元気です。

 先日、私の住んでいる街に“ジャウパヤー”という名前のタイ料理の店ができました。なんでも、タイに流れている、川の名前だそうです。私の記憶が正しければ、あのチャウプラヤ川のことではなかろうかと思うのだが。
 それはそうと、私はタイカレーが大好きです。タイカレーに限らず、東南アジア系の“地獄の黙示録”にでも出てきそうな、猛烈に辛い料理は全般に好きだったりもします。先月も、その名も“バンコク”というタイ料理のお店で、ソムタムとかいう生パパイヤで作られたサラダを食べすぎて、次の日は肛門の痛みに耐えながら一日を過ごしました。そんな地獄の黙示録なお店が新しくできたと聞きつけ、さっそく行くことにしました。
 
 そこ“ジャウパヤー”は、タイ料理のお店だけあって、やっぱりタイ人のお客が多く集まります。九州軟児と呼ばれている私は、メコンデルタ状態のそんな場所に、当然、一人では入ることができず、山岳会のソーさんを無理矢理誘って行くことにしました。
 そのソーさんは、今でこそ休日ともなれば、山登りと釣りに興じる仙人のような生活を送ってますが、かつてはバックパッカーとして世界中を旅した冒険ヤロウです。タイにも何度か訪れ、1ヶ月以上も滞在したこともあるとのこと。そんなソーさんなので、異国のフレイバーのただようお店が大好きです。夜9時まで会社のネジとして働いてクタクタにもかかわらず、喜び勇んでかけつけてくれました。
 
 お店に出かけた日はサタデーナイツ。店内は、大勢のタイ人でライブ状態です。とりあえずカウンター席しか空いてなかったので、そこに座りました。シンハビールを注文しカンパイ!!そしてメインディッシュを吟味しました。達人のソーさんは、なにやらエスニックな焼き鳥やサラダみたいなのを注文していましたが、私はとりあずカレーです。なにはなくともやっぱりカレーです。そのとき注文したのはグリーンなんとかカレーでした。
 そのグリーンなんとかカレーですが、タイカレー特有のココナッツミルクがタップリ入っていて、かなり美味い。そのとき食べたカレーもですが、そこの料理は本場タイ人が料理し、タイ人ばかりがお客で来ているにもかかわらず、そんなに辛くはありませんでした。次の日ケツの穴が痛むこともありません。料理も美味いと酒も進みます。達人ソーさんは、シンハビールは物足りないと言って、KIRINラガーを注文し、ガンガン飲んでいます。達人とはいえ、やっぱりあなたは日本人ですね。
 
 ほどなく酔いがまわってくると、達人はマスター(タイ人)に話しかけます。当然、日本語で。
 
 達人:“マスター、飯田にはタイ人は何人ぐらいいるの?”
 
 マスター:“ん〜、20人ぐらいね。”
 
 えっえ〜!!それって、今、この店に飯田のタイ人のほとんどが集まってるってことではないか!!
 すごいぞ!ジャウパヤー!!ここは、飯田のタイ文化圏ど真ん中だ!!そして、ノンダクレ日本人2人。こうなってくると、“外人”は私たち2人ということになってくる。日本語で話している人は、私たちを除くと一人もいない。ぶはは!おもしれ〜!!
 
 さらに酔いがまわってきた達人は、今度は女性店員に話し掛け始めました。当然、日本語で。
 恥ずかしがりやの私が黙ってお酒を飲んでると、達人ソーさんは得意げにこう言います。
 
 “塩月君、あの女性店員にす〜らいに〜って言ってみてよ!!”

 当然、私は“す〜らいに〜”の意味を知りません。でも、こういうときに使う言葉って、だいたい想像はつきます。とりあえず、達人の顔を立てて、女性店員に話しかけます。

 私:"す、す〜らいに〜!?”
  
 女性店員:“えっ!?なに?どういうこぉとぉ〜?それは、これなんですかって意味よぉ〜”

 なんのこっちゃ!?当然、達人も困惑の色を隠せません。

 達人:“あれ?きれいですねって意味じゃないの?”

 どうやら間違えたようですな。
 日本語で“きれいですね”の意味は、タイ語で“す〜らい”と発音するらしい。まぁ、似てるといえば似てるんですが、ちょっとカッコ悪かったです。でもそのおかげで、その女性と仲良くなれました。

 その女性店員は“ジュン”という、なんとも日本的な名前の人で、息子と一緒に日本に来ているとのこと。そういえば、さっきから小さい子供が店内をうろちょろしているなぁと思ったら、それが彼女の息子でした。

 まだ7歳の彼女の息子は、ロウ君という名前で、3月20日ごろから日本に遊びに来ていて、学校の始まる5月にはタイに帰ってしまいます。甘えんぼうのロウ君は、夜12時を過ぎても起きていて、お母さんのそばを離れません。ジュンさんは、哀しそうな顔をしてこう言いました。

 “この子に雪を見せてあげると言って、日本に連れてきたのに、雪が全然なくて、“うそつき”って言われっちゃッた・・・”
 
 な、なんということ・・・ ここ飯田市は長野県とはいえ、南のほうに位置するため、この時期には雪が全くありません。
 しかし、ソーさんが、“じゃあ、雪を見せに連れて行ってあげるよ。”とカッコよく言うじゃないですか!!
 
 ワシ:“雪を見せてあげるって、千畳敷へでも連れて行くおつもりですか!?”

 達人:“連れて行くしかないでしょ!!”

 さすがソーさん。飯田山岳会委員長だけのことはありますね。見直しましたよ。ちなみに千畳敷とは、中央アルプス宝剣岳の頂上直下にある、標高2600mの場所で、ロープウェイで簡単に行けます。くわしくはココ。
 
 達人:“だけどあそこって、バスとロープウェイの料金だけで、往復8千円ぐらいとられるんだよな〜。”

 ワシ:“ ・・・ ”

 というわけで、この翌日に、ロウ君に雪を見せてあげるために中央アルプスの千畳敷へ旅立つことになったのでした。

 つづく

 

ジャウパヤーで、お土産でもらった謎の置物