唐松岳〜五竜岳縦走 後半


モルゲンロートに染まる五竜岳    撮影=塩月





ピークハントを目的に山に来ているのではないと言いたいけれど,やっぱりその山の頂を踏みたいと思うのは,山登り
を趣味をしている人間には,しごくあたりまえの欲求だと私は思います。
とりあえず,唐松岳に登ったことによって,なんとなく一つの目的が達成された気分になりました。
しかし,まだまだ安心はできません。全体の工程から見れば,まだ1/3しか終っていないからです。そして,これからが
本当に大変だったりするのです。
いよいよ五竜岳へと向かいます。

唐松岳から五竜岳への縦走路で,難しい箇所は,牛首と呼ばれる岩峰から大黒岳あたりまでで,それさえ越えれば快
適な尾根路が続きます。

 その牛首
実は,これが大黒岳かと思っていました。
 撮影=塩月

 険しい岩稜地帯が続く
やはり北アルプス!
こんなにでかい雪庇(せっぴ)は初めて見ました。
稜線沿いは,こんなのばっかりです。
雪崩が恐い・・・
 撮影=塩月


牛首あたりから,黒部側にトラバースしていくのはわかっているのですが,そのルートが全然わかりませんでした。やは
り冬山は,無雪期に一度通ったことのあるルートを行くのが基本ですね。といっても,もう遅い・・・
こういうとき単独行は非常につらい。
しかたがないので,空身でルートを確認したり,ラッセルや雪庇を削ったりしてルートを作り,もう一度ザック(荷物)をと
りに戻るということを繰り返しながら進みました。
でも,いったい夏道はどういうふうに行ってるのだろうか?ここは,あまりにも危険すぎると感じたのだけど・・・

ところどころに残置されたザイルを発見するけど,バリバリに凍りついて,とてもそれを使って登る気にはなれませんで
した。しかしこのときほど,ザイルワークの必要性を感じたことはなかったと思います。特に単独行であれば,最低で
も懸垂下降の一つでも,できないとマズイと思いました。

なんとか無事に難所は抜けると,目の前には五竜岳,黒部側には剣岳を見ながら快適な尾根路が続きます。
といっても,雪庇を踏み抜いたりしないように,けっこう緊張した歩行が続くのですが。

 ずがーんと五竜岳                         またも剣岳
    
 撮影=塩月                             撮影=塩月

 五竜岳まであと少し                        なんとな〜く撮った岩壁
    
 撮影=塩月                             撮影=塩月


そしてようやく,下山方向の遠見尾根との分岐である白岳(2541m)まできました。
この山はトラバースして,五竜山荘に行けばいいのですが,このときはなんとな〜く頂上を歩いてみました。

 白岳山頂より,これまでの道のりをふり返る
感無量である。
 撮影=塩月


ここまでくれば,この日の宿泊地である五竜山荘は目と鼻の先です。

唐松岳頂上山荘を出たのが8時ごろで,五竜岳山荘に到着したのは午後1時ごろでした。
五竜山荘から五竜岳頂上までは,往復で1時間半程度とコースタイムではなっています。この日のうちに登ってしまおう
かと思いましたが,無理をせずにテントの設営にとりかかりました。
天気もいいし,時間にも余裕があったので,テントがすっぽり埋まるぐらいの穴を堀り,その中にテントを設営しました。
かなり快適です。そしてとても暖かい。
五竜岳を間近に見ながら,のんびりと過ごしました。
 
 五竜山荘から見た五竜岳
天気も良いし,すぐにでも登りたい気もしたが,逆に天気が良す
ぎて雪崩が恐い。
 撮影=塩月


午後2時を過ぎ,もう誰も登ってこないだろうと思っていたそのとき,人の声がするのでびっくりして遠見尾根のほうを見
ると,山スキーヤーとスノーボーダーの2人が登ってきました。
彼らは気さくに,話しかけてきました。
なんでも,遠見尾根に雪洞を掘って泊まりながら,山スキーをしているとのこと。
彼らは五竜山荘から五竜岳に少し上がったところから,シラタケ沢のほうへ滑っていったのですが,マジでビビッタ!
すげぇ!
別れ際に“気をつけてね”と声をかけると,スノーボーダー君が“それでは楽しんでいきましょう!”と返してきまし
た。
かっこよすぎる。

”おーし!オレも明日は楽しむぞー!!”

朝4時起床。6時出発。
まだ暗いうちから歩き始める。
天気もいいし,最高じゃ!

しばらくすると,モルゲンロートで周りが赤く染まり始めました。

 モルゲンロートに染まる五竜岳                 唐松岳方向
    
 撮影=塩月                             撮影=塩月


とても美しい。
独りっきりでこれを見ていたら,なんだかいろんなことが思い出されて泣いちゃった。
このときのモルゲンロートは,私にとって忘れられないものになるでしょう。


五竜岳頂上までは,険しい岩稜地帯になっています。
黒部側をトラバースしていき,途中で尾根に出るのはわかっているのですが,全然ルートがわかりません。
どうしてもトラバースするのがきついところがあるので,そこから尾根まで直登しました。しかし,残置ハーケンがところ
どころにあることから,おそらくルートを間違っていたのでしょう。
でもなんとか,頂上直下の雪壁まで到着することができました。

 頂上直下にある雪壁
ここを登るのは,これはかなり気持ち良かったです。
誰のトレースのないところを、ステップを切るのはかなりいい気分。
だけど雪崩が恐くて,端のほうをおそるおそる登りました。
 撮影=塩月


そしていよいよ五竜岳頂上に到着です。
ここからの鹿島槍ガ岳と剣岳の眺めは,本当にすばらしい。
この日は天気が良くて,日本海まで見渡せました。

 魅惑の双耳峰 鹿島槍ガ岳                   しつこく剣岳 
    
 撮影=塩月                             撮影=塩月

 とりあえず証拠写真として
誰もいないし,気持ちよかったなぁ〜
とりあえず万歳三唱!
ついでに加藤文太郎のように“エホー”と叫んでみました。
しかし風は強かった。
ゴーグルがなければ目も開けられないぐらいです。
 撮影=塩月

この後は,何事もなく(といってもギリギリです)五竜山荘まで降りました。だけど,五竜山荘から頂上まで往復5時間もかかってしまうとは・・・

下山は遠見尾根からだったのですが,山スキーの人たちのおかげでラッセルもなく快適でした。
遠見尾根からの五竜岳と鹿島槍ガ岳の眺めは,本当にすごかったな。でも,フィルムが一枚も残ってなくて写せなかっ
たのが残念でござるよ。

しかし,この山行は“単独行”としての限界を感じさせられました。
“体力的”にというわけでなく,“技術的”にという意味で。
どこかの山の会に所属して,登攀技術を身につけてから,また独りで山に還ってきたいと思います。


そんなもんで。






戻る