中央アルプス 三ノ沢岳
2847m


主稜線から見た三ノ沢岳(2847m)   撮影=塩月




 中央アルプスの三ノ沢岳(2847m)です。
 わたし的には、中央アルプスでは一番山容のかっこいい山だと思っています。宝剣岳も見た目はそれなりにかっこいいと思うのですが、山と呼ぶにはあまりにも裾野が小さすぎるような気がします。あれは山というより岩峰ではないかと思うんだけど・・・ それに比べてこの三ノ沢岳は、どっしりとした感じがしてなかなかの迫力。山容もピラミダルな感じで、すばらしい。私が深田久弥であれば、間違いなく日本百名山に認定しました。

 宝剣岳山頂から見た夏の三ノ沢岳
夏にこの景色を見て、この山に惚れました。 
 撮影=塩月

 しかし!残念なことに麓(ふもと)からは見えないせいか、あまり有名ではないので、ほとんど人が入山しません。特に雪山シーズンは、超ハイシーズンのゴールデンウィークでさえ2〜3パーティぐらいしか登山者はいない(江川情報)という悲惨な状況です。でも逆に、静かな山行を楽しむには絶好の場所ではないでしょうか。

 ということで、チョー静かでロンリーな山行を楽しむために登ってきました。
 そのときの日程です。
12月1日:駒ヶ根高原駐車場バス停⇔しらび平ロープウェイ駅⇔千畳敷⇔極楽平⇔三ノ沢岳


 三ノ沢岳には中央アルプスへの最もポピュラーな登山口である、千畳敷から入ります。千畳敷も12月ともなれば、一面真っ白の冬景色です。このときは例年に比べて以上に雪が異常に多いということで、ホテル千畳敷の指導員が雪崩に注意するように呼びかけていました。まじっ!?

 千畳敷から見た宝剣岳
曇っているせいか、なんか寒々しい。
 撮影=塩月


  千畳敷から三ノ沢岳へは、主稜線上の極楽平の方から登ります。ホテル千畳敷から宝剣岳を見て、左側(西側)の沢をつめていくんですが、トレースが全くなくて、かなりビビリが入りました。危ない箇所はない(と言い切ってよいのかどうか・・・)ルートとはいっても、正直不安です。とりあえず、勇気を振り絞って最初の一歩を踏み出しました。

 ホテル千畳敷前から見た極楽平方面
あまりにも広々として、逆に迷ってしまいそうな気がする。
 撮影=塩月


 でもまぁ、登り始めればどうってことない雪山登山で、だんだんと調子も上がってくるものです。トレースをつけて登るのは、なんだかんだいって気持ちがいい。
 しかし!30分ほど登ったころ、ホテル千畳敷のほうから叫び声が聞こえます。“何事?”と思って振り向くと、スーツを着たガイドの添乗員らしき人が、こっちに向って大きく手を振りながら叫んでいるじゃありませんか!“そっちはダメ!!そっちはダメ!!”と繰り返し叫んでいるので、“これはただ事じゃない”と思いホテル千畳敷まで急いで戻ると、そのオッサンはもういない・・・ なにが“ダメ”なのか、ホテルの前にいた指導員みたいな人に話を聞いてみると、“別にダメじゃないよ。たぶんあの人(叫んでいた添乗員)は、君がルートを間違って登っていると勘違いしたんじゃないかなぁ?”とのこと。
 な、なにを〜!! 
 確かに、千畳敷から登山をする人のほとんどが木曽駒ケ岳・宝剣岳を登るため、東側の乗越浄土方面に向っていくので、西側に向って行く私を見てルート間違ったと思うのもわかるのだが、あまりにもひどい仕打ちだ!おかげで1時間はタイムロスをした。体力的にはそれ以上である。
 でも気を取り直して、登り始めることにした。


 極楽平までの登りは、下から見るよりずっと急に感じられます。沢部は雪崩が恐くて、ちょっと行けない気がしたのでできるだけ尾根上に突き出たところをつめて行きました。また雪は、深いところで膝上ぐらいまでで、そんなにラッセルで苦しむようなことはなく助かりました。
 
 途中、ホテル千畳敷方面を振り返る
なかなかの高度感。
3人のパーティーが、私のトレースの後を登ってくる。
 撮影=塩月


 ホテル千畳敷から極楽平へは、40〜50分程で着きます。以外と早く登ってこれたので、チョット安心。目標の三ノ沢岳も間近に見え、いい感じである。

 極楽平付近から見た三ノ沢岳

 撮影=塩月


 しかし!油断は禁物です。主稜線上であるため、風が猛烈に強いのは覚悟しなければいけません。この日もビュービュー風が吹きつけ最悪でした。

 強風の中、宝剣岳方面へ進むと、三ノ沢岳への分岐にやってきます。ちなみに、この分岐から宝剣岳方面は、岩稜地帯となっているため非常に危険です。私も冬に一人でそっち方面には行きたくはないなぁと思ったりもします。

 分岐点付近からみた三ノ沢岳
 ここから見た三ノ沢岳が、一番かっこいいかな。
 撮影=塩月

 分岐点から三ノ沢岳頂上までは、基本的には一本道です。おそらく迷うことはありません。おそらくね・・・
 ここから、多少やせ尾根となっている箇所もありますが、そんなに危険な場所はなかったように感じました。でもアイゼンは、当然、必要です。

 三ノ沢岳へと続く稜線

 撮影=塩月
    
     撮影=塩月


  しかし、この日は全くツイてない。天気予報では、天候は回復傾向だということだけど、どんどん下り坂。晴れていれば、ものすごく展望のいい尾根道のはずなのに・・・


 稜線上からみた空木岳方面

 撮影=塩月
     木曽駒ヶ岳方面
    
     撮影=塩月

 
 この日は、やっぱり天気は下り坂。なんで?と思いながらも、ピークを踏むまでは帰れんぞ!!とワケガわからない闘志に火がついてました。
 
 こんな感じでほとんど先がわからない

 撮影=塩月

 途中に、遭難碑となっているケルンを過ぎて、そのままズンドコ進めば程なく頂上に到着します。

 ていうか!どこがピークなのか全然わからんかったぞ!
 
 頂上に到着する頃には猛吹雪だったというのもありますが、標識らしきものが全く見あたらない。そんなマイナーな山なのか?とりあえず、山頂らしき場所をよく見ると、なんとか水準点らしきものを発見しました。たぶんここで間違いないでしょう!!

 おそらく頂上?
 看板らしきものがあった跡と思われる棒と、水準点です。あと周囲にはでっかい岩が、岩峰みたいにゴツンゴツンと固まってありました。
 ここが本当にピークなのか、情報を求む!!
 撮影=塩月

 
 後は来た道を帰るだけ。だけど猛烈に吹雪いていて、正直焦り気味。往きに見た遭難碑が、すごく不気味に見えました。
 そして、なんということか(“やはり”という感じだけど)迷ってしまった・・・

 主稜線から三ノ沢岳方面に向う分岐点付近は、ちょっとしたプラトー(平坦な場所)になっていて、視界が悪くなると自分の場所がわからなくなってしまいます。この付近に来るまでは、なんとか稜線に沿って歩いてきたけど、とうとうルートを見失ってしまいました。懸命に自分が往きにつけたトレースを探したのですが、雪と風ですっかり消えてなくなってしまっています。しまいには、さっき自分で歩いてつけたトレースが往きのトレースじゃないかと勘違いする始末。ホントにもうパニック状態でした。こういうときはおそらく、その場にじっとして天候が良くなるまでまてばいいのですが、日帰り山行ということもあって、ろくな装備を準備してなかったりするわけで・・・あとはコンパスを頼りに、そこだ!と思うほうへ進むしかありませんでした。とりあえず北東方向へ登っていれば、主稜線に出れるのではないかと信じて歩くしかありません。
 自分の居場所を失って1時間ほど経ったときでしょうか。もうそろそろ主稜線に出ないと、マジでヤバイなと思い始めたときです。映画“サイダーハウスルール”のメインテーマが聴こえてくるではありませんか!
 なんで?幻聴か!?
 いいや違います。私の携帯の着メロでした。
 電話はIさんからのものでした。おもむろに電話に出てみると、あら不思議!?すっかり自分の置かれている状況は忘れて、普通に会話しています。そして普通に何事もなかったように、電話を切ったりもします。でも、この電話のおかげでダイブ落ち着いて状況判断ができました。
 携帯の電波が届くということは、主稜線上、もしくはそれに近い場所ではないかと思い、あたりをよ〜く見ると・・・あるんですよ!登山道に沿って張ってあるロープが!!それもすぐそばにあるんだな、これが。
 それさえ見つけることができれば、あとは簡単にホテル千畳敷まで戻ることができます。よかった、よかった。
 
 とまぁ、結果的には何事もなく下山できたわけですが、非常にやばい状況であったことは確かです。この山行では、平常心を失うと見えるものも見えなくなってしまうというのを学びました。おいらもまだまだ修行が足りんな。
(でも、千畳敷でわけわからん添乗員に足止めをくわされなければ、こんなことにもならなかったのかも・・・)

 それとこの三ノ沢岳ですが、冬でもホテル千畳敷から6〜7時間で往復できます。もちろん、天候と雪の状態にもよりますが。静かなとても良い山ですので、おすすめ度はかなり高め!!ホントだよ!

 そんなもんで。