ヤリホー
2003年8月5日
みんな元気?私は元気です。
山登りを思う存分したくて長野県へ移住してきたものの、実際は仕事が忙しくてそれどころではないという現実です。“だったら仕事で山に行くしかない”と考え、この一年間、“山の仕事があれば是が非でも!!”と周囲に言い続けてました。そしてついに!それが現実のものとなったのです!うれしー!!しかも場所は、北アルプス槍ヶ岳から穂高岳への縦走です。ありえない!!神に感謝感謝です。
ちなみに仕事というのは、某山岳誌のビデオ撮影です。私はカメラマンのアシスタントして参加しました。
今回はその様子を、日記形式にまとめてみました。というより日記を書いていたので、それにちょっと修正を加えたものです。
◆期間◆
7/26〜8/3の9日間
◆スタッフ◆
プロデューサー Y氏
ディレクター K氏
カメラマン T氏
モデル A嬢
B嬢
そして私の計6名
7月26日 天気:晴れ
朝8時にディレクターのK氏と、松本インター出口で合流し、上高地入りする。上高地で、他のスタッフを待っている間、K氏と準備をするが、山の撮影は初めてなので勝手がよくわからない。しかしK氏がいれば、なんとなく安心だ。ディレクターのK氏には、普段よくお世話になっていて、今回の仕事もK氏にお誘いを受けて実現したものだ。なにはなくともK氏に感謝だ。
東京から、プロデューサーのY氏、カメラマンのT氏、そしてモデルのA・B嬢が到着する。それぞれの第一印象は、
プロデューサー Y氏 ・・・ 超強烈個性。一度見たら、たぶん一生忘れない。
カメラマン T氏 ・・・ いかにも山男。少し神経質な感じがする。
モデル A嬢(29歳) ・・・ しゃくれあごだが、けっこうかわいい。
B嬢(20歳) ・・・ 顔はイマイチだが、胸はでかい。
ここでK氏は、カメラマンのT氏に“塩月君はカメラのこともわかるし、山のことも知っているVEだ。”というふうに私のことを紹介する。正直、少し困惑する。音声のことなら“多少”自信があっても、カメラに関しては、ちょっと不安。しかも山に関しては、ほとんど自己流だ。しかしK氏の期待には応えたいので、気合いを入れてやるしかない。
今日の予定は、槍沢ロッヂまで。徳沢まで車に乗って行く。途中、撮影を一度だけ行なうが、カメラマンT氏の撮影スタイルに少し戸惑いを感じる。いろんなカメラマンについて仕事をしてきて、少しは自信があったつもりだが、非常に難しい。しかし、嫌いではない。
歩きながら、デルモA嬢の山歴を聞く。厳冬期の槍ヶ岳、5月の明神岳などと、どれも私の実績をはるかに上回る強烈なものだ。かなりビビリ。なんという女!!
槍沢ロッヂには、以外に早く着いた。なんとここでは、風呂に入れる。かなり幸せ。夕方、T氏にカメラのことをいろいろ教わる。“なんていい人なんだ”と感じつつも、次の日からのプレッシャーに今夜は眠れない・・・
7月27日 天気:晴れ のち 曇り
今日は槍岳山荘に到着した。
今日からモデルに歩かせて撮影だ。しかし、モデル2人の動きはマシーンのようだ。どうみても素人。というより、もともと素人なんだけど・・・
撮影自体は、音声がない分気分的には楽だが、撮影スタイルがいつもと違うので非常に気を使う。ほとんど仕事はしていないのに、かなり疲れた。
昨日より歩く距離は少し長かった。槍岳山荘直下で、かなりバテタ。やはり空気が薄いせいなのか?
槍岳山荘につくとすぐにビールが出てきた。プロデューサーのY氏が行くところ、ビールが必ず出てくるという噂は、どうやら本当のようだ。
山小屋では、スタッフ全員同じ部屋だ。当然、モデル2人も同じ部屋。デルモA嬢は、非常に気が利く娘だ。“こんな人がいるんだ”と少し驚いた。どうでもいいけどデルモB嬢は、バレエをやっていたというだけあって、体が驚異的に柔らかい。しかし声はマシンボイスのようにヘンだ。
テン場には、福島からやってきた女子高校生のパーティーがいた。面白いほどブサイクな女が集まっている。T氏の“粒がそろっているなぁ〜”の一言に非常にウケた。T氏のギャグのセンスはかなりのものがある。その中に、槍ヶ岳を見て感動して、オンオン泣いてる娘がいた。それを見て、チョッピリ感動してしまった。しかし泣顔はものすごいものがあった。
山小屋では、中京テレビのクルーが撮影に来ていた。ヘリで機材一式を荷揚げしてきたようだ。撮影は私が里でやってるようなENGスタイル。そんなに昔のことではないのに、少し懐かしさを感じる。
槍ヶ岳を間近に見て、一昨年にエガとここに来たときのことを思い出す。ついでにあの頃を思い出す。
| 槍岳山荘から見た槍ヶ岳。 |
7月28日 天気:曇り 時々 晴れ
朝から濃霧がたちこめ、ほとんど撮影ができない。お昼ごろ停滞が決定した。
訓練のため、槍ヶ岳頂上へ登頂する。ほとんど遊びに近い。かなり楽しい。こういうのもアリでしょう。
夕方3時ごろから酒を飲み始める。かなり飲んだ。デルモA嬢は泥酔状態。アホすぎる。
| 槍ヶ岳頂上から見た槍岳山荘。 下山のはしご待ちの様子です。 写真上から、カメラマンT氏、デルモB嬢、A嬢。 |
7月29日 天気:曇り 時々 雨
今日も停滞。
寝るか本を読むしかない。
デルモA嬢は、朝から気分が悪いようで朝食をほとんど食べない。こういうのがあると、全体の士気が下がる。“意地でも食え”と思ったが、あんだけ飲めばしょうがないかな。
山小屋の休憩室へ行ってみる。見たことがある娘がいるのでよく見ると、我々が撮影しながら山荘へ上がってくる途中に、単独で登っていた女性だ。どうでもいいけど、女性の単独行、特に小柄の女性を見ると思わず“がんばれ!!”と声をかけたくなる。きっと大きなお世話に違いないが、そう思うのは私だけではないはず。その娘はただの単独行者と思いきや、実は槍岳山荘のバイトだった。色白で明るく、かなりかわいい。声をかけたいがそんな勇気はない。
休憩室にあったデビルマンを2巻まで読む。かなり面白い。里に帰ったら、ぜひ続きを読もうと思う。
7月30日 天気:雨 のち 晴れ
今日も停滞。これで予備日を使い果たすことになる。手痛い停滞。
山小屋のサービスが良すぎて、次から次へと食い物が用意される。くっちゃね!くっちゃね!やっほーい!!かなりの罪悪感。
どうでもいいけどデルモB嬢の寝相の悪さはなんだ!!昨夜は、5発も蹴りをくらった。かんべんしてくれ。
夕方晴れたので、槍ヶ岳の山頂で撮影を少し行なうことができた。ここにいることに幸せを感じた。
大キレットで滑落事故があったらしい。一人死亡とのこと。長野県警の隊員も上がってきた。これから撮影で行くところだ。マジか!!
7月31日 天気:晴れ 時々 曇り
ようやく朝から快晴に恵まれた。朝4時半から撮影を開始した。
槍ヶ岳から南岳小屋まで撮影しながら進む。
さよなら槍岳山荘のバイト娘!二度と会うことはないでしょう。ていうか一言もしゃべってないし。
南岳小屋についてから、大キレットへのロケハンにカメラマンT氏と行く。この6日間、T氏について仕事をしてきたが、だんだん彼に人として魅力を感じはじめる。断っておくが、けっして私はホモではない。
大キレットのロケハンで、ゲロリながら歩いてくるオヤジに会う。どう見ても普通じゃないので、T氏が様子を見るため残り、私が小屋へ連絡に走る。そのあとT氏と私でオヤジの荷物を担いで小屋まで来た。そのオヤジ、山に来るまで仕事がとても忙しく、疲労がたまって体調を崩したそうだ。そこまでして山に来る気持ちはわからないでもない。みんなそうだから。
夜、満天の星空を見ることができた。みんなで星を見ようと外へ出たが、正直、私は☆に興味がない。早々に部屋に引き上げると、デルモB嬢だけが部屋に残っている。“みんな外で星を見てるから、行ってきなよ”と言うと、感想文を仕上げなければいけないとか言って、何か必死こいて書いている。なんでも、以前、北八ヶ岳へ撮影に行ったときの感想を出版社に提出しなければならないとのこと。“なにもこんなとこまで来てやらなくても・・・”と思いつつも、“じゃあ、できたとこまでオレに見せてみろ!”と言うと、“読んでみてくださいよ。”と言って途中までの文章を見せてくれる。普通こういうものを他人に読まれるのは嫌がるもんだけど、この娘はそういったことは気にしないようだ。とりあえずその自慢の感想文とやらを読んでみる。かなりイッちゃってて、理解不能である。本人曰く“ちょっとクサすぎるかなぁ?”。クサイというより腐ってるかもと思ったが、“いいんじゃない?”とかテキトーなことを言って、私は寝ることにした。
| ロケハン中、大キレットから本谷カール(東)方面に放尿するカメラマンT氏。 |
8月1日 天気:晴れ のち 曇り
大キレットを越えた。
使わないと思っていた、ハーネス・ザイル・ビナをフルに使用して撮影をした。あれはヤバイ!ヤバすぎる!!一般ルートなので、普通に山行をするのであれば“それなりに危ない”程度かもしれないが、撮影となると危険度の次元が違う。ヤバイ位置での撮影の連続でとても緊張した。
朝、K氏が私に“サポーターかテーピングを貸してくれ”と言ってきた。どうやら左ヒザを痛めたようだ。大キレットを越えるとき終始痛みを我慢しているようだった。K氏の荷物をいくらか持って、足への負担を軽くしてあげたかったが、私にはそんな余裕はなかった。
モデル2人も危うい感じもなく、越えていった。なにはなくとも、無事でヨカッタヨカッタ。
北穂高小屋に着いたとき、ディレクターのK氏がみんなに握手を求めた。喜びをみなで分ち合った。そして私はカメラマンT氏とだけ、再び硬い握手を交わした。熱いものが込み上げてきた。
8月2日 天気:晴れ
北穂高小屋から涸沢岳を越えて、穂高岳山荘へ到着した。
昨晩、となりに寝ていたデルモA嬢は咳で苦しんでいた。長い間、行動を共にすると、ヘンな仲間意識ができてくる。となりの人が苦しいと、自分も苦しい。となりが眠れないと、自分も眠れない。妙に彼女のことが心配でたまらない。
涸沢岳への登りは、大キレット同様にかなり危険な匂いのする場所だった。正直、大キレットを越えるときより恐ろしかった。浮石だらけで、不安要素が多い。そんなルートに感じた。
穂高岳山荘では、プロデューサーY氏のおかげで、お風呂に入ることができた。Y氏の影響力の強さというか、日頃の努力というか、とりあえず彼が偉大だと感じた。一週間ぶりのお風呂は本当に気持ちが良かった。頭を洗うだけでイッてしまいそうだった。
山荘のオリジナルTシャツを購入した。これまたP氏のおかげで、3,800円のものが2,000円で購入できた。ありがたい話だ。風呂あがりに早速着用した。しかしこの後、デルモ2人が私と全く同じTシャツを購入。そしてこれまたすぐに着用する。アホか!!恥ずかしすぎる!!しかし、こういう高校生のようなノリは嫌いではなかったりする。
これがみんなと最後の夜。サヨナラは、やっぱりカナシイ。
| 穂高岳山荘のオリジナルTシャツを購入する。 左からワシ、デルモB嬢、小屋の主人、デルモA嬢。 |
8月3日 天気:晴れ
奥穂・前穂を越えて上高地へ下山した。
奥穂では、急きょ!!ヘリでの撮影が行なわれた。マヂカでヘリがバリバリ飛行しながら、頂上にいるモデルや一般の登山者を撮影していた。なんかスゴイ。そんな簡単に、ヘリでの撮影が行なわれていいのか!!
前穂高を越えた後、ディレクターK氏の足は限界にきていた。スタッフ全員でK氏の荷物の一部を分担した。K氏のこれまでのがんばりに感謝したい。私にもっと体力・腕力があれば、もっとたくさんの荷物を持てたはずだ。
| 前穂高岳にて。 左から、ワシ、ディレクターK氏、デルモA嬢、カメラマンT氏。 |
岳沢ヒュッテに到着したとき、デルモB嬢が、カメラマンT氏とザックを交換して背負うことになった。なんでも、重いザックを背負う経験してみたいということのようで。どうせならオレのザックを背負ってくれ!とも思ったが・・・
そのデルモB嬢、上高地に着くまでは、なんとかみんなについて行ったが、しだいに遅れはじめる。河童橋付近でついに、一番後ろを歩いていた私とデルモB嬢が完全にパーティーからはぐれる形になってしまった。デルモB嬢は完全に開きなおったのか、“河童橋の上で記念写真を撮りたい”とか言い始める始末。しかしよく見ると、私とデルモB嬢は同じ穂高岳山荘のTシャツを着ている。それについてB嬢は“いまどきカップルでもペアルックなんていないのに恥ずかしすぎる!!”とギャーギャー騒ぎ始めた。そしておまけに、私のナビを疑って、“道は本当にこれでいいの?A嬢に電話する!A嬢の電話番号は・・・キャー背負ってるザック私のじゃない!!携帯がないからわからない!!”と支離滅裂状態。
アホか!!お前の歩きが遅いから、こういうことになったんじゃねぇか!!
と思ったりもしたけど、よくがんばって重い荷物を背負ってきたとホメテやろう。
| 河童橋、梓川をバックに、デルモB嬢。 |
その後、無事に集合場所へ到着し、みんなと合流。
風呂に入って、そばを食って、お別れでした。
最後のお別れは、イガイにアッサリ、サヨウナラ。
みんなありがとう。
って、なにが?
とまぁ、こんな感じで楽しい9日間の撮影でした。
ディレクターK氏には、今回の撮影に参加させていただいたことに本当に感謝したい。そして、行くことを許してくれた会社の社長にも。
そんなもんで
今回の仕事では、カメラマンT氏と出会えたのが一番の収穫です。